健やかで明るいチークの木目を持つ、YAMAHA製アップライトピアノです。 ヤマハはピアノの生産技術の進化に大きく貢献したメーカーです。ピアノの重要な材料になる木材 は、金属やプラスティックに比べ、均一性を保つ事が難しいデリケートな材料です。 そのデリケートな木材を、量産ラインに載せられる素材として扱える工程をつくり上げたのが、ヤ マハです。W-103はその木材をふんだんに使ったピアノです。ちょっと変わったデザインをしていま す。 普通は、鍵盤の部分の一番外側に腕木と言う部材が見えていますが、このピアノでは鍵盤蓋を閉 ると、その腕木が見えなくなる形をしています。代わりに、鍵盤蓋のきれいな木目が巾いっぱいに広 がります。ピアノ職人は大量の原材料の中から、ピアノの表面材になれるものを丹念に探し出してい きます。表面材は傷や割れ、シミなどがないのは当然で、更に組み立てた際に、各部材の木目が美し く調和している必要があります。ですからこの工程は非常に難しく、職人のセンスが大きくものをい います。選び出された天然の木の素材は、それだけで十分な美しさを持っています。W-103は木の美 しさがピアノになった。そんなデザインのピアノです。 古くなると廃棄処分されるピアノもありますが、当時の価格55万円のW−130は、現在中古市場で 40万円以上のものもある人気商品のようです。 これは前項にもお出ましいただいた、世界的にも著名な弦楽器製作者無量塔蔵六氏のお話の引用で す。「不思議なのは、日本人が音楽の世界で日本人と日本製品を認めたがらないことです。諏訪内晶 子が優勝したチャイコフスキー・コンクールで、NHKは取材に来ていたにもかかわらず、優勝する まで諏訪内を無視したのがよい例ですね。日本の製品はメード・イン・ジャパンということで信頼さ れているのに、ヴァイオリンに関しては日本人は日本製を無視する。どんなクズでもイタリアのラベ ルが貼ってあればよしとする。現実には中国やハンガリーでつくられたものがイタリアに運ばれ、ラ ベルだけ貼って日本に持ち込まれるという例があるんですよ」。スタンウェイにさえ良いものと、そ うでもないものがあるのが現実です。作家やメーカーが、誠心誠意を込めてつくり上げた製品と、そ れを理解する使い手。この相互の関係が成立しないと物も人も育たないのだと思います。 廃棄処分されるピアノとオーバーホールしても使い続けられるピアノ。何が両者を分けるのでしょ うか。 幅 1510mm × 高さ 1210mm × 奥行き 620mm、重量225kgTOP画面に戻る